平成8年度 研究報告 大分県塵集村学技術センター
樹脂模型を用いたセラミックス鋳型への検討(第1報)
一光造形システムによる複雑形状部品の一品生産に関する研究一言浦洋之・高橋芳朗*
機械電子部・X材料開発部
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要
光造形法により作成した階段型樹脂模型を用いたセラミックス鋳型の製造方法の検討を行った.その結果セラ ミックス焼成時の昇温過程に於いて,樹月旨の燃焼により多量に発生するガスの圧力で鋳型が破壊されるのを防ぐ
ためには,従来型のロストワックス法よりは厚手のコーティング(今回は11層)と中間層での針金による鋳型
の拘束が有効である辛が判明した.また同時に鋳型破壊を防ぐ焼成方法として,鋳型内に送風しながら低速昇温 し併せてガス圧を低下させる事も重要である.今回焼成実験に用いた樹脂模型は未だ目標の厚みより厚く,従っ てガス発生量も多く,ガス圧の影響等が大きいものと思われるが,樹脂を用いた消失模型によるセラミックス鋳 型に関しては,適正なコ■ −ティング及び昇温方法にて製造可能である.
1.はじめに
我が国の基幹産業である鋳造業界も産業界の変革から 精密鋳造部品が増加しつつあり,同時に自動車,自転車,
ミシン及び一般産業機械分野では光造形法により作成し た樹脂模型を用いた精密鋳造品の製造方法が注目を集め ている.この樹脂模型による精密鋳造品は,セラミック スを用いた鋳型で強度が高く,従来の鋳造法とは根本的 に異なった手法であり,機械加工の困難な形状及び精度 の要求される部品等への適用が検討されている。特に難 切削材で複雑形状晶を集積一体化構造で製造する事が可 能であるため,機械加工数の削減や多数個部品を一体化 した鋳造が出来る事により,コストダウンが図られる鋳 造法である.
ロストワックス法に代表される精密鋳造品は,鋳放し
で寸法精度が20∼30〃m
に鋳造出来ると言われてい
るが,方案から鋳込みまで管理が十分でないと満足な数 値は期待出来ない。特に樹脂模型を用いた場合ほその形 状,更には鋳型材等が精度に大きく影響を及ぼすものと 考えられる.そこで,精密鋳造品の肉厚差による面引け 及び変形を主体とした階段型を用いて樹脂模型の影響及 び強度の安定した鋳型の製造について検討を行ったので 以下に報告する.
2。実験方法
2.1鋳型の形状及び鋳込み方案
樹脂模型を用いた鋳造法では,従来型のロストワック ス法と同様にセラミックスを多層コーティングし,表面
から加熱し,樹脂模型を消失する事によって空洞化し鋳 型を製造する。また樹脂を用いる場合は,樹脂消失時に 発生するガスの影響を考慮した模型形状にしなければな らない.Fi g.1に樹脂模型形状と鋳込み方案を示す.
樹脂模型の形状としては,湯口,湯道,堰及び除淳等 の方案についても製品に連結し,一体型とした.その中 で湯口方案では,溶湯を注入した時の溶湯の乱流を考慮 し,除浮方案としては製品の高さより高くする事によっ て鉱捧が製品中に流入しない高さを決定している.更に 製品と湯道部分を切断する間隔を設定した。
製品寸法では,最小肉厚5鋸町2段目が5取庖,3段目が10迅迦 の合計20題血の肉厚とし,巾50mm,長さ100m血と決定したの は鋳型へ溶金を注湯したのち各段から切断し,物理試験, 機械試験等に供するためであり,各肉厚感度による評価
を求めるためである.その中で最先端の5mm肉厚部は、樹 脂模型を焼成する工程において(樹脂模型として中空に なり難い)鋳型を破壊する恐れがあるため,厚くセラミ ックスをコ【ティングする事及び樹脂模型消失時に発生 するガス圧によって,鋳型内寸法がどのように変化する かを評価するために決定した.
2 2 セラミックスの物性及びコーテイング法について
模型表面にコーティングする泥格セラミックスは,ス ラリー材として用いるジルコンフラワー(Tabl e2)にコ ロイグルシリカ(Tabl el )を3:1∼4:1(重量比)に添加 し,混練したものである.ジルコンフラワーは耐火度が 高く,熱膨張が低いため本実験用として適し,また粒度
平成8年廣 研究報告 大分県産♯科学技術センター
(#350)の細かい材料を用いることにより,模型の表面
を正確に転写する事が出来る.Tabl e3にはこの泥牌セラ ミックスの調合及び適正な粘度について示す。
ところで,ジルコンの粉末にコロイダルシリカを添加 し,混練して安定化したのち,ぬれ性の改善を図るため には,一般的には1∼2層まではジルコン系のフラワーを 用い,3層以降はムライトフラワー及び溶融シリカを用
いるが,本実験ではジルコン系のみを用いた.
次にTabl e4に泥牌セラミックスにスタッコ材をサンデ ィングする工程を示す.1∼2層は細目のジルコンサンド を用い,3層∼6層までは若干粗いムライトサンドを用い, 更にそれ以上のコーティングは粗目のムライトサンドを スタッコ材として用いた.模型表面に近いほど細かいス タッコ材を用い外層面になるに従って、粗目のスタッコ材 で積層を行った.Fi g.2にセラミックスのコーティングフ
ローを示す.
Tabl el 精密鋳造用バインダー(スノーテックス30)の物性値
Si O2(%) Na20(%) 水素イオン(PH) 粒絹(岬)
30∼3互 0.6以下 9.5へ′ 10.5 10∼20
34 1■ T「F
Tabl e2 ジルコンフラワーの化学成分(wt %)
′、蔓775)
Zr O
2 Si O
2 Fe203 Ti O
… A1203 PH
66.16 32.58 0.068 0.132 0.30 6.9
Fi g,1樹脂模型形状と鋳込み方案
=設 計卜 ◆
Tabl e3 スラリー調整割合及び適正粘度 スノーテックス30 100
界面活醐(とやクタータェット) 0.005∼0.01
シヾルコンプラワー(#350) 330∼380
粘度(サ0−ン如デ粘度痺5) 30∼40秒
樹脂模型の製作 CÅDデータを凱摘発墓を紳て模型の雛
有雛剤による洗浄(酷ロ、浜這、壕箋)
コロイタ予沖洲カ(30%Si O呵)+シ予ルコンプ卵−
ジルコンサンド
35℃の乾燥
模型の洗浄 (注)添加調整2∼3時間後から使用
Tabl e4 サンディング方法
第1∼2層コウインク+
・夏空≦ スタッコ材 乾燥時間 1∼2 シヾ炉ンサンド細目*70(0−2∼0.8mm) 3時間
3∼6 ムライけンド那卜朗0(0。7∼1。2mm) 2時間
7∼1互 ムラ再サントや粗目 #20(1。0∼1.5mm) 2時間
第1∼2層サンデルデ
第3∼6層コーティング予
23鋳型の焼成方法について
階段型試験片をセラミックスコーティングL,乾燥後
箱形電気炉にて昇温9 焼成を実施した。
3。実験結果及び考察
3.1鋳型強度の確認
¢ 第一回目の焼成実験として,階段型試験片(3試料) に従来のロストワックス法と同等の8回のセラミ ックスコーティングを行い,乾燥後焼成実験を実
施した。Fi g。3に昇温パターンと焼成実験結果を示す.Nol
の実験では,電気炉内で室温から徐々に加熱し,2時間
程度で350℃まで昇温した時点で鋳型が完全に破壊した.
第3∼6層サンディンクや
ムライトサンド(細目)
50℃の乾燥(乾燥機使用)
第6層以降のコーティング寸
第6層以降のサンディンク÷ ムライトサンド(粗粒)
最終首班終のみをコーチノンク
乾燥(温度50℃) 最終コうインク予(11層)
最終乾燥
Fまg.2 セラミックスコーティングフロー
平成8年度 研究♯告 大分県産業科学技術センター
3.2.2昇・温方法の改善
策一回の実験結果ではいずれの昇温方法でも 300℃∼ 350℃付近で鋳型が破壊した事を踏まえ,300℃∼400℃の 温度領域を50℃/hr で緩やかに昇温し,急激な昇温による 鋳型内での燃焼ガス圧力上昇の防止を図った.更に発生
したガスの圧力低下も目的として,鋳型内に送風しなが ら昇温を行った.具体的には鋳型の湯口部分に直径6由髄 の錦パイプを挿入し,電気炉外から小型コンプレッサ【 を用いて空気を鋳型内に送風しながら炉内を昇温した,
(Fi g,5)
次にNo2の焼成実験として,電気炉内を350℃に昇温した 時点で鋳型を装入した結果,鋳型は完全に破壊した.更 にNo3の実験では,電気炉内を1000℃に昇温した時点で鋳 型を装入した結果,これも完全破壊した.以上の結果か
ら,鋳型内に発生する樹脂の燃焼に伴うガス化によって 鋳型内(鋳型の鋳込ロは開放)の圧力が高くなり,鋳型 が破壊したものと考えられる.更に㌔01,No2の鋳型共300 ∼350℃付近の温度で破壊を生じる宰,また1000℃に直接
装入したNo3の鋳型でも,350℃付近で破壊を起こしてい
る事から,300∼350℃の温度領域での温度対策と焼成方
法の工夫が必要である.
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焼戚畔閏(噂一冊 Fi g.5 鋳型内に送風しながら昇温
3.2.3焼成結果
Fi g.6に昇温パターンと焼成実験結果を示す.鋳型を強 化し且つ送風しながらの昇温では,鋳型は破壊する事な
く,外層部分に小さなクラックを生じた程度で焼成する 事が出来た。また階段型模型の内面には異常は見当たら なかった。(Fi g.7) 更に昇温過程では350℃付近で白 煙が発生し,昇温するに従って黒煙が発生し,500℃ 付近で炎上した,これは特に300℃∼500℃付近の樹脂の 燃焼温度域では酸素の供給を必要とする事から,鋳型に 送風しながらの昇温による助燃効果と考えられる。
本実験の結果,樹脂模型を用いた鋳型の焼成は鋳型の 強度向上及び焼成方法の工夫により可能であるが,当焼 成法では400Ccまでの昇温時間に4時間を要した事から, 今後短時間焼成でも破壊を生じない適正時間を探索して
いきたい.
Fi g.3 第一回鋳型焼成結果(通常の箱型電気炉内昇温)
3.2鋳型の強化と焼成結果
第一回目の実験結果を踏まえて鋳型の強度を上げる事 と,鋳型焼成時の工夫から鋳型内に送風しながら昇温す る焼成実験を行った.
3.2.ト鋳型の強化装
通常のロストワックス法での8回コーティングでは樹 脂模型消失時のガス圧に耐えきれず破壊に至った。そこ で鋳型の強度向上対策として,コーティング回数を11 回とした。更に7回コ¶ ティングした時点で0.4払出の径線 針金を巻結し,その上からセラミックスコーティングを 実施し鋳型を作成した.Fi g。4に針金による鋳型の補強状 態を示す.
∴、1‘ ’
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素瓶 璽 2 3 丞 5 6 7
焼成時間(噂椚‡)
Fi g.6 第二回鋳型焼成結果(鋳型内送風しながら昇温)
Fi g.4 7回コーティング÷複の針金による鋳型の補強
平成畠卑鹿 研究報告 大分県塵#科学接衡センタ叩
Fi g.7 鋳型焼成後の階段型空洞の状況(切断後)
4。おわりに
樹脂模型を用いたセラミックス鋳型の製造に於いては, 樹脂が350℃∼450℃でガス化し鋳型内の圧力が上昇する ため,一般的なロストワックス法と同等のセラミックス コーティング方法では,鋳型の強度がその圧力に耐えき れず破壊に至ってしまう.従って樹脂模型を用いる場合 は,鋳型の作成及びその焼成方法にガス圧による破壊対 策が必要となる.そこで先ず鋳型の強度を上げる対策と
して,①11回のセラミックスコーティングy ②7回コ ーティング後に針金を巻締めし鋳型の補強を行った.更 に焼成方法の工夫としては、第一回目の焼成実験結果か ら,150℃/時間での急激な昇温では鋳型内のガス圧上昇 を引き起こす事が考えられるため,その緩和策として5 0℃/時間の低速昇温と鏑パイプを用いて鋳型内に送風し ながら昇温する寮とした。以上の方法により第二回目の 焼成実験を実施した結果,鋳型の破壊は起こらず,また 空洞部も正常に焼成する事が出来た.これにより針金と セラミックスの厚みを厚くする賓での鋳型の強度向上効 果と,送風の効果が大きい事が確認できたレ 特に送風の 効果としては,①鋳型内部が徐々に昇温,②鋳型内に発 生するガスを空気により型外へ放出9 ③樹脂模型が炎上 するまでの鋳型内部と鋳型表面との温度差等が考えられ
る。
今回樹脂模型を用いたセラミックス鋳型の製造方案に 目処を得る事が出来た良 しかし今回の鋳型のコーティン グ方法及び焼成方法は生産性の面からは問題もあるため, 最適化については今後の研究課題とする.また本実験に て用いた光造形システムにより製作した樹脂模型ほっ 目 標とする厚みより厚いため,ガス量等の影響が大きく出 たものと考えられ,今後光造形システムによる模型化に 於ける最適化に関しても研究していく。併せて今後実湯
の鋳込みによる製品作成とその評価も実施する.
文献
且)吉浦洋之:昭和62年度大分県工業試験場研究報告 「ロストワックス法による精密鋳造品の精度に関する研 究一